歯周病とは
歯周病とは、歯を支えている歯槽骨や歯肉などの組織が、歯周病菌に感染し破壊されてしまう病気です。歯槽膿漏とも呼ばれます。
歯周病は、人類史上最も感染者数の多い感染症で、虫歯と並んで口腔内の二大疾患の一つと言われています。
自覚症状に乏しいため、異変を感じたころには症状が進行している場合がほとんどです。
正常な状態と歯周病の比較
歯周病の状態
歯周病は
- 歯肉炎
- 歯周炎
に大きく分けられます。
歯肉炎
初期段階の歯周病で、歯肉に炎症が起こっている状態です。
歯周病
歯肉だけでなく、歯の周りの歯周組織まで炎症がおよび、歯槽骨などが破壊されている状態です。
歯周病は、症状が進行すると完治することが困難となり、最終的に歯が抜けてしまいます。
歯周病の主な原因
直接的な原因
プラーク(歯垢)、バイオフィルム
プラーク(歯垢)とは、食後8時間程度でできる微生物の塊のことです。食べかすが細菌の栄養源となるために、食後に発生します。
1mgあたり10億個以上の細菌が詰まっていると言われています。
プラーク(歯垢)が口腔内に長時間留まって膜のようになったものが「バイオフィルム」です。膜のようになって歯に付着しています。
実は身近にあるもので、台所の排水溝にある「ぬめり」がそうです。
これらの細菌の毒素によって歯周組織が侵され、歯周病を引き起こします。
バイオフィルムは通常の歯磨きなどでは除去できません。抗生物質や洗口剤も効きません。
歯石
プラーク(歯垢)が唾液中に含まれるカルシウムやリンと反応して石灰化すると「歯石」となります。
歯石は「死んだ細菌の固まり」であり、プラーク(バイオフィルム)のようにそのものが歯周病を引き起こす原因にはなりませんが、歯石の表面はデコボコしているのでプラークが付着しやすい状態です。
そのため、歯石の上にプラークが付着して石灰化するとさらに大きな歯石となり、歯茎の炎症をさらに招く結果となってしまいます。
間接的な原因
歯周病には、下記のような間接的な原因もあります。
歯並び
歯並びが悪い場合、ブラッシングが行き届かない箇所が多くなります。
プラークが付着しやすくなります。
不適合な詰め物
詰め物が適合していないと、隙間や段差にプラークが付着し、細菌が繁殖しやすくなります。
悪習癖
歯ぎしり、食いしばりといった習癖は、歯に大きな負荷を与えます。
歯周組織にも負担がかかり、歯周病を誘発します。
口呼吸
口呼吸をしている方は、口の中が乾燥しやすくなります。
だ液による自浄作用がなくなり、菌が繁殖しやすくなります。
生活習慣の乱れ
喫煙や過剰なストレス、食生活の乱れなども、歯周病を悪化させる要因となります。
その他
糖尿病を患っている方や妊娠さんなども、歯周病を進行させるリスクが高い傾向にあります。
歯周病の検査と治療
歯周ポケットの測定
歯と歯ぐき(歯肉)の間には、歯肉溝という「みぞ」があります。プラークなどの細菌によって炎症が起こると、この溝は徐々に深くなっていきます。
これを歯周ポケットといい、その深さによって歯周病の進行度を判断していきます。
歯周ポケットの深さ
1~3ミリ程度
一般的な深さであり、歯と歯茎の状態が健康な状態といえます。
3~5ミリ程度
中程度の歯周炎と診断されます。
歯が浮いた感覚になり、硬いものが噛みにくくなります。
6ミリ以上
症状はかなり進行しており、重度の歯周病と診断されます。
歯を支えている歯槽骨が半分ほど溶けて、歯にぐらつきを感じるようになります。
根の長さは、長くても10数ミリ程度です。歯周ポケットが6ミリ以上の深さになってしまうと、歯がグラつき不安定な状態になることはイメージいただけると思います。
歯周病の治療
軽度の歯周病
軽度の場合、歯周ポケットはまだ深くない状態です。歯石やプラークを除去することで改善します。
ブラッシングのチェックを行い、磨けていない部分や磨きにくい部分などを確認していきます。しっかりと正しいブラッシングケアを継続することで、自然治癒します。
中等度の歯周病
歯ブラシでは届かないポケットの中に、細菌が侵食している状態です。
歯肉縁下の歯石の除去を行い、精密な検査を行います。中等度の歯周病には、およそ1〜2ヶ月の治療期間を要します。
重度の歯周病
重度に進行してしまうと、歯肉が腫脹し、歯槽骨は大部分が失われている状態です。
中等度の治療にくわえ、手術が必要となるケースもありますので注意が必要です。治療期間も数ヶ月におよびます。
中等度〜重度の歯周病の方は、重度のむし歯を患っている場合もあります。
重度のむし歯は、歯を残すために「根管治療」が必要となります。
定期メインテナンス
歯周病の治療後も、定期的なメインナンスはとても大切です。歯石を除去しても、正しいブラッシングができないままであれば、歯周病が進行するリスクは高くなります。定期的に歯科医院へ通いながら、お口の中の歯周病菌を減らすことが重要です。
当院では、歯科衛生士によるブラッシングチェックを行っています。日常生活に予防歯科を積極的に取り入れ、習慣化させることで歯の健康を維持していきましょう。